『はっぴ〜ぶり〜でぃんぐ』
このページにはこのエロゲーに関するネタバレがあります。
未プレイものは読まないようにしましょう。
CG、システム、声優、エロなどに特に文句の付けどころなし。
単なる萌えゲーというコンセプトをちゃんとすくい取っている。
シナリオは……萌えゲーとしてはこんなものなのかも知れない。
ただ、個人的には、ドラマトゥルギーがあって始めて本物の萌えが表現され
尽くせると思うのですよ。そういう部分では、『グリーングリーン』の方が上手く構築できているし。
いくらプレイヤーの感情移入能力が萌え要素によって強化されているにしても、
背景のない萌え要素はそのままでは単なる記号で終わってしまう。
『KANON』の真琴に萌えるのは、彼女が真実を知った上で祐一との再会を願う心が
あるからでしょうに。
魔女の扱いにも疑問。
彼女は何を意図して、動物たちを人間に変えてしまったんだろう。
単なるボランティアなどというには、あまりに肩入れしすぎ。
古来から願いを叶えるには代償が必要でしょ。
ヒロインたちは何を支払ったの?
この辺の悲劇性の薄さがシナリオの安っぽさを倍増させてる。
いろんなモチーフは割と上手く引用できたのだから、それを「はぴぶり」世界と
からめていってほしかった。存在の意味を問うにはあまりにも非力なキャラたちを
見るに付け、益々そう感じる。物語こそがキャラクターを生き生きと動かす。
萌えがもしも癒しの一種なのだとしたら、それは何かに認められる心地よさだろう。
ここに居ることが善であるという確信。しかし、それを根本的な部分で求めるには、
「はぴぶり」は余りにも幼い。
萌えゲーマーの欲望だけで出来たエロゲーという印象だけが残る。
ただまあ、”こんなもんでしょ”と言うことはできるかも。
これはこれで大絶賛している方もいらっしゃるようだし。
2002.12.9
追記。
オフ会とか、葱板とか、げいむ乱舞会などで最近立て続けにはぴぶりに対する賛辞を聞いたので、少し書き足しておく。
はぴぶりは、誉めるにはあまりにあまりな出来でしかない。
それは萌えゲーとしての立場を自ら壊しているからだ。
はぴぶり最大の欠点は、ユートピアを作り出そうとする気概に欠けていることだ。
設定のあからさまな陳腐さはここでは換えって良い部分になる。
具体的には、魔女とその魔法の存在、それからシナリオ展開が問題である。
それによって萌えは阻害され、物語は悲惨になる。
動物が人間になることについてはぴぶりは説明すべきでなかった。
大きな家に一人暮らしであるとか、支出への不安がないとか、なぜ主人公が選ばれたのか判らないとか、
ご都合主義の溢れるところに、くだらない説明はまったくの不要なのだ。
説明は論理を生み出し、物語が生命を持ってしまうからだ。
そうすると、もう作者の手によっては制御できなくなる。
魔女はなぜヒロインたちを人間の姿にしたのか、なぜ100年という代償を払ってでもヒロインのひとりを人間にしたのか。
この疑問は不安を呼び、不安は影を呼び寄せる。
ヒロインを永遠に得るということ、つまり「報酬」(あるいは「魔法」)には代償が必要なのであるが、 ここで主人公は何も支払っていない。
代償のない魔法はない。
スタッフロールが流れ、エンドと画面に表記されたとしても、あの物語は何一つとして終わっていないのだ。
これでは安心して萌えられない。
気持ち悪いし、気分が悪いし、ぞっとする。
どうせ萌えだけゲーを作るのだったら、そのような説明は完全に無くしてしまえばよかった。
「そういうものだ」と語るとき、世界はそう作られるのがフィクションではないか。
シナリオライターには、自分が物語の語り手であることを自覚してほしいものだ。