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『こころナビ

このページにはこのエロゲーに関するネタバレがあります。
未プレイものは読まないようにしましょう。

 



2003.7.24
バッドエンド一回後に凛子ルートクリア。
あらすじに意味がないので、今回は特に書かずにおく。

こころナビそのものがボーイ・ミーツ・ガールな展開なわけで、
「こころナビ」というシステムの謎に触れないシナリオは、
その展開が上手く出来ているか、少女に出会った少年の心境が上手く描けているか、
少年に出会った少女の心境が上手く描けているかが評価の主になるだろう。
で、ちゃんとその辺を描いているかといえば、多少ぬかりがあるような気がする。
他にもいる魅力的な少女たちを蹴って、なぜ主人公は凛子を選んだのか。

ヒロインを選択する中に凛子が入っていたからよしとするのも、
AVGジャンルとしてはアリかも知れない。
主人公が巫女さんに述べたように、恋に理由はいらないと言い切れなくもない。
自分を見つめて、その結果としてある結論が浮かぶ。
そして、その結論に自己規定される。人間の自我や思考というものはそうやって
積み上げていくものだろう。
そういえば「こころナビ」は、最近のエロゲでは珍しく主人公から告白させてはいないか。
少女に選ばれるのではなく、少女を選ぶこと。
それが最終的にプレイヤーに委ねられているということを鑑みれば、まあ、
納得してもいいかもしれない。というか、そうしよう。
最近プレイした中では実にヒロインたちが魅力的で気持ちいいゲームなわけだし。
それに私も自己規定されてみよう。

エロゲ史的には、実妹エンドを正面から描こうとした点が珍しいと思う。
シスプリのブレイク以降は妹ゲーが大量に史上にあふれ出た。
しかし、その中で実妹と明記した上で、バーチャルセックスによってソフ倫規制を
クリアさせるという回避方法はなかなかよく出来たギミックではないか。
まあ、この点についてはどこかのサイトが詳しく書いているだろうし、
エロゲ歴3年程度の小僧が言うべきことでもないだろうから、
これ以上は語らないでおく。

あと、ちょっと気になるのは主人公以外の語りがところどころで入るところなのだけど。
これは別の中核的なシナリオで語られるのだろうね。

アイノ・ペコネンのシナリオをクリア。
外国人との恋愛にしてはカルチャーギャップの演出がなくて残念。
フィンランド事情は楽しく読ませてもらったが、そこにアイノの思い入れが
もっと感じられたらよかったかも。あるいは、フィンランドの昔話をシナリオに取り込むとか。
もっとも、そこまでやるとボーイ・ミーツ・ガールものとしては物語が進みすぎるのかも知れない。
自走しはじめた物語は作者にも止められないものだから。

アイノのキャラクターは丁寧に作ってあるが、どこか物足りない。
気絶するほどの弱気さ、微乳、変な日本語、外国人(フィンランド)、銀髪、ツインテール、
このあたりが萌え要素か。組み合わせに意外性がなく、気弱なキャラクターであれば
互換性がありそう。キャラ立てのためにもうひとつアイデアを入れるべきではないかな。

こころナビは全体的に表情の作りが巧い。実に巧い。
表情の変化によって感情を示すのは「君が望む永遠」でも物凄く効果的に使われている。
こころナビは演出としてあそこまで完成されたものではないが、一つ一つのしぐさを
感じるような動きがキャラの感情を巧く伝えてくれている。

2003.7.26
友人に「アイノのキャラがイマイチな印象」と告げると、その友人の友人曰くに、
「アイノは語尾にペコネンをつければよかった」とのこと。
そう、まことに示唆的な発言だ。アイノには他のキャラに負けないアクの強さが
どこか必要だったのだ。気弱なだけのヒロインはもう喜ばれないのだ。
この発言はそのまま適用するには難しいものの、萌え世代の直感力を表していて、興味深い。

また、私たちがフィンランドをよく知らないという事情もあったような気もする。
フィンランド人という萌え要素を受け止める素質を持っていなければ、
それは空回りするだけだ。とはいえ、マイナーな外国人をストレートに描くことを
やってのけたのは誉めたいところだ。

みまりシナリオクリア。
告白することで好きになってもらうというのは珍しい展開かもしれない。
だけど、全体的に印象が薄い。
関西弁、巫女、年上あたりが萌え要素か。
関西弁はどこか違うような。発音も違和感が残る。
印象が薄いのは凛子のせいだろうとは友人のお言葉。

2003.7.27
仲手川夢のシナリオ終わり。
可もなく不可もなく。
キャラクターはみまりさんの方が魅力的だが。

意地っ張りってところを強調して、告白を一度全部断るぐらいの行動力が夢にあれば
シナリオは引き締まったかもしれない。
少年の恋愛には挫折も付き物だろうと思うのだ。
まあ、それは別に夢シナリオでやらなくてもいいんだけど。

小春ルート。
なっとくいかねー!!
結婚?!
ハァ?

幼馴染から恋人への急激な関係性の変化はそりゃ怖いだろうよ。
いきなり身体ばっかり求める恋人はそりゃ怖いだろうよ。
エロゲだからって学校のトイレでするなよ。
主人公のこころを小春が判らなくなるのも当然だろうさ。

んで、一度分かれて。
スタッフロール終わったら即結婚かよ。
あそこは小春の心情とすれ違いを描くところじゃないの?!
苦しくても小春を信じる主人公のココロを、小春が再発見しないとダメだろ。
どうやって二人が和解したのか描かないことには、その後の結婚と幸福を
信じられないでしょうに。
二人には信頼関係はあるよ、そりゃ。だけど、気持ちのすれ違いがあったから
小春は主人公と一度別れようとしたんでしょうが。
自分の気持ちも、主人公の気持ちも、両方とも少しずつ信じられなくなった小春
がどうして主人公を信じられるようになったのかは、このルートで一番重要な
心象じゃないのか?!

中途半端に物語性を入れるぐらいだったら、ご都合主義でもいいから
無理矢理ハッピーエンドにすりゃいいのに。
時間がなかったとか言い訳は許さん。
こころナビの中で一番むかつくシナリオだ。

2003.7.28
ルファナのシナリオ。エンディングロールを見ているところだが、少しメモを。
人間は人間以上の知性を作れない。だから、ラウンダーのAIは人間以上のものを作れない。
しかし、まったくランダムに生まれるものがあれば、突然変異によって人間以上のものを
作れるAIが生まれるかも知れない。ルファナというラウンダーはだから、
ウィルス感染によって増殖し、生まれでた中でもっとも優秀なもののみを残して削除した
んじゃないだろうか。
って、ラッカーの「ソフトウェア」のうろ覚えの引用に過ぎないけど。

ルファナ終了。
友人がこのシナリオについて、機械知性に対する冒涜だと言う。
機械知性について私は特に思い入れはないが、SFへの冒涜だとは思う。
あるいは、「こころナビ」全体をファンタジーと呼ぶのもアリかもしれないが、
ファンタジーもSFと同じく作品論理を重要視するジャンルということを忘れてはいけない。
こころナビは、近代的モラルによって歪められた子供向けおとぎ話の域を越えない。

結末を変更された「桃太郎」では、鬼は改心して人間と仲良くなってしまう。
酷く歪んだご都合主義を導入した「こころナビ」では、ただのプログラムが説明なしに
肉体を持った人間として主人公のもとに現れる。
あの別れの場面に意味があったのだろうか。ルファナをすぐに復活させてしまった方が、
ご都合主義の使い道として優れているだろう。

こころナビが舞台ツールになっていた他のシナリオはともかく、ルファナルートは
その成立や能力について描かれていた。機械と人間の恋愛を本気で実らせようとするのなら、
こころナビについて精査した上で、さまざまなアイデアを検討し、作品中で具象化させ
なければならない。
はっきり言ってしまうと、このシナリオは悲恋に終わってよかったのだ。
それを、目に見えない強力なハッピーエンド主義という化け物に囚われてしまった。
あるいは商業的な理由を元にハッピーエンドを選択したのかもしれない。
どちらにせよ気持ち悪いことに替わりはない。

もしも商業的理由を元にしてハッピーエンドを選択したのだとしよう。
短期的にそれは成功するだろう。プレイして気持ちいい作品は多くのユーザーを満足させるだろう。
しかし、そこで失ったものはプライドではなく、作品に込めるべき魂だ。
魂を失った語り手の物語に価値はない。

作中での「こころナビ」は魔法だ。
だけども、魔法は便利なハッピーエンド装置ではない。
魔法はどんなことも出来るが故に、物語中において厳密で高い規範と、
高度な論理性、倫理を求められるのだ。
ドラえもんの道具は魔法だが、一定のルールがあり、正しい使用法を逸脱してしまうと、
ノビタはジャイアンに叩きのめされることになる。
正しい利用法内で使い方を工夫すれば、それだけの利益を与えてくれるものでもある。
「こころナビ」には論理がない。これは大きな致命的欠陥だと言えるだろう。

誤解されないように先に言っておくが、私はハッピーエンド主義を批判したいのではない。
どうせやるなら、物語をハッピーエンドに導くための伏線張りをしっかりやれとか、
あるいは悲劇を呼び込まないために物語性を薄くしろと言いたいのだ。
強い物語性は悲劇を呼び込むものだ。魅力的な設定ならなおさらだ。
中途半端に苦難が襲ってきたところで、ハッピーエンド主義というイデオロギーによって
解決法が歪められるぐらいなら、そもそも苦難などいらない。
ハッピーエンドのための厳密な物語作りを私は強く求めるものだ。

こころナビ総論。
凛子最高。
夢、みまり、アイノは普通。
小春、ルファナはムカツク。っていうか最悪。
全体としては完璧に普通。
ただ、今年発売分にしては高水準なのかもしれない。
ただのパクリであるSNOW(や他のパクリ商品)などは商品として高水準だろうが、
作品としては最低だ。

そうそう、肝心のテーマについて。
人間が理解しあえるというのはいかにも無邪気な幻想だ。
子供っぽくて話にならん。

とはいえ、いくつかいい事も言っている。
どのルートだったのか忘れたのだが、
自分を見つめることで人格が完成すると思っていたが、それは自分という沼で
溺れているだけであり、他人という鑑に向き合うことで自分をそれなりに把握する
ことが出来るようになる、という感じのセリフ。
「自我」という言葉に溺れていたところに「他者」って単語が出てきたという
西洋哲学史を思い出す内容じゃないかね。

また、無邪気な幻想を、疲れた大人へのエールとして捕らえるのも悪くはないかも知れない。
それを、受け手が無邪気にもてあそばないことが重要な点ではあるが。
多くの条件を成立させないと肯定的にはなれないところにテーマの弱さがある。




 

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